防カビ期間の新たな基準/防カビ効果の指標となるカビ抵抗性試験の日数は何を基準にしているのか?
カビ抵抗性試験の考え方と
防カビ期間の新たな基準
カビ専門の(一社)抗菌防カビ清掃技術研究所です。当研究所のサイトをご覧いただきありがとうございます。
今回は当研究所が様々なページでお伝えしているカビ抵抗性試験の期間についてお伝えしています。少し難しいですが参考になれば幸いです。
カビ抵抗性試験の日数
カビ抵抗性試験とは簡単に言うとカビが生えない期間を試験する事です。試験するものを「検体」といって、素材に防カビ剤を混ぜ込んだ物や木材やろ紙に防カビ剤をスプレーしてその防カビ剤の効果を測るものがあります。
シャーレの中に検体を知れて約100万個のカビ胞子がある懸濁液をスプレーします。そして温度25℃~26℃、湿度90%以上の測定器に入れて7日、14日、21日、28日間の4段階で防カビ効果を試験します。
これをJIS Z2911(カビ抵抗性試験)といい、検体・カビの種類・栄養剤を変えて試験することができます。
最もカビ(または細菌)が生えやすいのは糖分とタンパク質の多い食品ですが、今回は食品ではなく建物や家具に使われている建材についてお伝えしています。例えば木材・畳・紙(ダンボールなど)はカビが生えやすいものです。
各社で防カビ期間が異なる
こちらは当研究所がインターネット上に公表されていた「推定の期間」を集計したものです。どれも塗料や防カビ剤など対象面に付ける薬剤です。※今回はプラスチック樹脂やビニールクロスに混ぜ込まれてた「防カビ剤」は対象外としています。
7日間 | 14日間 | 21日間 | 28日間 | |
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A社 | 3~6ヶ月間 | 1年間 | 3年間 | 5年間 |
B社 | 3~6ヶ月間 | 1年間 | 2年間 | 3年間 |
C社 | 1~3ヶ月間 | 4~7ヶ月間 | 8~11ヶ月間 | 1年間 |
D社 | 3ヶ月間 | 6ヶ月間 | 9ヶ月間 | 1年間 |
例えばA社の場合、14日間のカビ抵抗性結果があれば実際の環境で約1年間は効果が持続すると記載しています。D社の場合は6ヶ月間です。
当研究所が調査したときは合計で10社以上の会社が上記のような推定の期間を掲載していました。最も多かったものは28日間の試験で1年間というものでした。
疑問点
日本産業規格JIS Z2911の試験はやり方を変えることができますが、この日数をクリア(耐久)すれば実際の環境では約3年間持続する。など推定の期間は公表していません。そのため上記4社のサイトに掲載されている試験内容を見比べると、どれも同じやり方で試験をしていることが判明しました。※上記以外の会社は少しずつ違いがありました。
どれも同じやり方で試験をしているのに各社とも推定の期間が異なることに疑問を感じました。
湿度が高い時期は2度来る
6月・9月(または10月まで入り込む)は季節の変わり目で月の平均湿度が75%を超える場合があります。※気象庁の相対湿度月平均。
経年劣化した木製のタンスにカビが生える1つの原因は、タンスに使われている糊の防腐効果がなくなって、表面にホコリ・チリが蓄積したものが「栄養」になります。しかしそれだけでは乾燥しているのでカビが生えません。
この栄養が揃っている状態の場所に6月の温度25℃~30℃、湿度75%以上の環境が数日間続けは、カビよりも先に細菌が繁殖します。細菌が代謝したものはカビの栄養になるものが多いので、待機していたカビ胞子が爆発的に繁殖します。
年間の多湿日は60日以上あることからカビ抵抗性試験28日間で3年間・5年間持つという推定期間は正しいのでしょうか。
もちろん汚れ(栄養)のない綺麗な空間で防カビ剤を使えば3年間・5年間は簡単に持つでしょう。しかしカビ抵抗性試験をやるということは「カビが生えやすい場所で使うことを想定している証拠」なので基本的に栄養がある場所で推定の期間を出さないと意味がありません。
まずは最も多かった28日間=約1年間を基準した
当研究所の施工記録では1年間(または2年間)で再発していたカビを平均5年間持続させています。そして最長記録は10年間です。この1年間で再発したという情報はお客様から頂いている情報で、「以前は○○業者にカビ取りしてもらった」など様々な情報があります。
そしてその業者が使っていた薬剤及び技術も判明しています。それは防カビ剤を使っているものもあれば、ペンキなどの塗料に防カビ剤が混ざっているものもあります。どれもカビ抵抗性試験の28日間をクリアしていますが推定期間は掲載されていませんでした。
このことから各サイトで公表されている約1年間の耐久情報とお客様から頂戴した情報を合わせると、カビ抵抗性試験28日間をクリアしている防カビ剤はおよそ1年間の効果が多いことがわかりました。
28日間の試験は短いので2回繰り返す
上記のような様々な理由を考慮した結果、当研究所は現時点でカビ抵抗性試験28日間を2回クリアした検体があれば約1年間の推定防カビ期間があると考えています。2回とも検体を変えてはいけません。100万個のカビ胞子を噴射した1回目の検体にもう一度100万個の胞子を噴射して2回目を行います。
この試験をすれば各社が公表している推定期間と、様々な現場から取得した情報に多少一致します。
「防カビ」という製品・技術に基準が必要
当研究所はこの試験を12回繰り替えして336日間クリアしました。※現在も試験を継続しています。
しかし気象庁の相対湿度では年間で平均3ヶ月間は75%以上の多湿な月があるので、当研究所はカビ抵抗性試験を84日間(懸濁液を28日間毎に1回噴霧)耐久したものに対して推定1年間の効果があるという基準を設けた方がいいと考えています。
現在は除菌剤・消臭剤・床ワックス・撥水剤・カビ取り剤・洗浄剤など様々な製品に「防カビ」と書かれています。一般のお客様は「防カビ」という文字をみて「カビが生えなくなるんだ」と考えます。
例えば、一般的な浴室に黒カビが生えたとして、お掃除をすれば一ヶ月以上黒カビが姿を見せないこともあると思います。そこに「防カビ剤入り浴室洗剤(一ヶ月間カビが生えない)」と書かれていても、本当に効果があったのか疑問を感じます。※一ヶ月の防カビ効果なので上記の表を参考にするとカビ抵抗性試験で7日間をクリアしたものかもしれません。
このままでには【防カビ剤→効果がない】ということになりかねません。
そこで当研究所はこのカビ抵抗性試験に新たな厳しい基準を設ける活動をするため数々の教育事業を通して企業の皆様に「カビない防カビ対策/防カビ剤の現在の事情」をお伝えしています。業界で統一することでお客様の理解がより一層深めれば、適切な場所で適切な防カビ対策ができると信じています。
- 今回比較しているものは食品ではありません。
- 今回比較しているものは塗料や防カビ剤など対象面に付けるもので比較しています。ビニールクロス・プラスチック樹脂などに混ぜ込まれている防カビ剤は対象外です。