防カビ期間の新たな基準/防カビ効果の指標となるカビ抵抗性試験の日数は何を基準にしているのか?

その「防カビ◯年」、たった28日間の試験で
言っていませんか?
一般的なカビ抵抗性試験(JIS Z 2911)の評価期間は、最大でも28日間。私たち防カビ技研は、同じ試験を36回・1008日間まで拡張し、毎回およそ100万個のカビ胞子を再噴霧しながら、全期間で再発ゼロ(判定0)を確認しました。※業務用を対象とした記事です。
要先に結論
- 一般的なカビ抵抗性試験(JIS Z 2911)は、最大28日間(4週間)で防カビ性を評価する試験です。
- 防カビ技研はこれを28日×36回=1008日間まで拡張。毎回約100万個のカビ胞子を再噴霧し、全期間で菌糸の発育ゼロ(判定0)でした。=ここは試験で確認できた事実です。
- カビが活動する高湿度期は実質4ヶ月(6〜9月)。これを「1年分のカビ負荷」とみなすと、1008日間は試験条件下で約9年分の高湿度負荷に相当します。=あくまで換算値です。
- ただし実際の持続年数は、建物の状態・素材・栄養・微生物などの環境で大きく変わります。保証の有無や年数は施工する抗菌防カビ施工士(事業者)によって異なりますので、詳しくは担当の施工士にお尋ねください。28日の試験だけで「○年保証」と断言する業者にはご注意を。
JIS Z 2911 の拡張試験は第三者試験機関にて実施/一般社団法人 抗菌防カビ清掃技術研究所(防カビ技研)会員100名。
評価期間(上限)
繰り返した試験回数
(再発ゼロで通過)
カビ胞子の数
カビは「見た目」だけの問題ではありません

カビは黒ずみや美観の問題だと思われがちです。しかし、カビが発生している環境では“カビ臭”の原因となるMVOC(微生物由来揮発性有機化合物)が出ることがあり、米国EPAは「カビ臭がある場合は建物内でカビが成長している可能性があり、調査すべき」としています。MVOCは、いわば“目に見えないカビのサイン”です。
実際に、カビが関与したとされる健康・衛生上の問題は、各分野で報告されています。
- 健康カビなどを吸い込むことで過敏性肺炎を起こすことがあるとされます(日本呼吸器学会)。
- 労災カビ粉じんを吸った作業者が発熱・咳などを訴え、過敏性肺炎と診断された事例があります(厚生労働省)。
- 食品意図しないカビが発生した食品は、リコール報告制度の対象になり得ます(厚生労働省・食品衛生法)。
- 施設医療・介護施設では免疫の弱い方がいるため、より注意が必要とされます(WHO/CDC)。
だからこそ防カビは、“今あるカビを消す”だけでなく、再びカビが生えやすい環境にどれだけ耐えられるか(=防カビ性能)を客観的な試験で確かめることが重要になります。その代表的な試験が、次に紹介する「カビ抵抗性試験(JIS Z 2911)」です。
監修・参考:吉田 政司 博士 ― 防カビ研究一筋40年/特許第1451611号 発明者/著書『カビを防いで快適生活』ほか
カビ抵抗性試験(JIS Z 2911)とは
カビ抵抗性試験とは、ごく簡単に言えば「カビが生えてこない期間」を調べる試験です。木材やろ紙などの素材(検体)に防カビ剤を施し、シャーレの中で約100万個のカビ胞子を含む懸濁液をスプレー。温度25〜26℃・湿度90%以上の環境に置き、7日・14日・21日・28日の段階でカビの発育を確認します。
使用するのは、ケタマカビ(Chaetomium)のように木材や紙を侵す力が強く成長の速いカビをはじめ、クロカビ・アオカビ・クモノスカビなど、公的機関に登録された強害菌の標準菌株です。つまり「自然界よりはるかに過酷な、カビが最も生えやすい条件」をわざと作って試しています。

なぜ「28日間」では足りないのか
日本でカビが本格的に活動するのは、湿度の高い時期だけです。気象庁の平年値(東京・1991〜2020年)で月平均の相対湿度を見ると、6月75%・7月76%・8月74%・9月75%と、6〜9月の4ヶ月だけがハッキリせり上がっています。
月平均相対湿度(%)/出典:気象庁 東京 平年値(1991〜2020年)。赤=高湿度期(6〜9月)。
冬(1月51%・2月52%)は乾燥していて、そもそもカビが生えにくい時期です。年平均の65%という数字は、この乾いた冬まで含めて平均した値なので、実際にカビが攻めてくる夏場の厳しさを正しく表していません。だからカビ対策は、年平均ではなく「カビが活動する高湿度期だけ」で考える必要があります。
しかも梅雨どきは1日の平均湿度が90%を超える日も珍しくなく、夜間は気温が下がるぶん相対湿度がさらに上がります。5月・10月にも高湿度の日はあります。つまり「高湿度期=4ヶ月」という見方は、むしろ控えめ(安全側)。最低でも4ヶ月は耐えられて、はじめて「1年もちます」と言えるはずなのです。
各社の「推定期間」がバラバラという問題
下表は、当研究所がインターネット上に公表されていた各社の「推定の防カビ期間」を集計したものです(いずれも対象面に塗る・吹き付けるタイプの薬剤。樹脂やクロスに練り込まれた防カビ剤は対象外)。
| 7日間 | 14日間 | 21日間 | 28日間 | |
|---|---|---|---|---|
| A社 | 3〜6ヶ月 | 1年 | 3年 | 5年 |
| B社 | 3〜6ヶ月 | 1年 | 2年 | 3年 |
| C社 | 1〜3ヶ月 | 4〜7ヶ月 | 8〜11ヶ月 | 1年 |
| D社 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 9ヶ月 | 1年 |
各社サイト公表値の集計(2023年10月時点)。
よく見ると、4社とも試験のやり方はほぼ同じ。なのに「28日間クリア」で推定期間が1年〜5年とバラバラです。同じ試験で結論がこれだけ違うのは、推定期間に共通の基準がないから。28日間という同じ土俵の上で「5年」と言い切ってしまう——ここに、お客様が判断を誤る危うさがあります。
防カビ技研の拡張試験 ― 1008日間の中身
「28日間が短いなら、納得いくまで続ければいい」。私たちはそう考え、JIS Z 2911 を極限まで拡張しました。実際にやっていることは、地味で、執念深い、この繰り返しです。
木片に防カビ剤を施す
通気性被膜防カビ剤を浸透させた木片(約45×45×厚み5mm)を検体として準備します。
約100万個のカビ胞子をスプレー
1回あたり約100万個に相当する混合胞子の懸濁液を、検体めがけて噴霧します。実環境で月に100個浴びる場所すらほぼ無いことを考えると、けた違いの過酷さです。
湿度90%以上・温度25〜26℃で28日間放置
カビが最も生えやすい高温多湿の環境に、まるまる4週間置きます。
28日後、木片をピンセットで回収
検体の木片をピンセットで取り出し、新しい清潔なシャーレへ移します。同じ検体を使い続けるのがルールです。
もう一度100万個を噴霧して、また28日
移した検体に、再び約100万個の胞子を噴霧して28日間放置。1サイクルがこれで終わります。
これを36回くり返した = 1008日間
合計36サイクル・1008日間。その全期間を通して、検体には菌糸の発育が一切認められませんでした(判定0)。試験は現在も継続中です。

防カビ技研が考える「新しい基準」
推定期間を「憶測」で語らないために、私たちは換算のものさしを一つに決めました。
大切なのは、この数字を「効果の保証」として独り歩きさせないことです。だから私たちは、数字を必ず次の3つの層に分けてお伝えします。
防カビの専門業者を選ぶなら

「防カビ」と書かれた製品・技術は、いまや消臭剤から床ワックスまであふれています。だからこそ、お客様に選んでいただく側の私たちは、言葉ではなく試験データで語るべきだと考えます。
もし業務用の防カビ対策で業者を選ぶなら、ぜひこの一点を確認してください。「JIS Z 2911 を、どこまで拡張して試験していますか?」。28日間で止まっている試験より、極限まで繰り返した試験の方が、判断材料としてはるかに信頼できます。理由はシンプルで、そこに科学的な根拠があるからです。
よくある質問
一般的なカビ抵抗性試験は何日間ですか?
防カビ技研の拡張試験は何が違うのですか?
「約9年分」とはどういう意味ですか?
なぜ年平均湿度ではなく「4ヶ月」で考えるのですか?
この試験はどこで行ったのですか?
家庭用でも同じ基準ですか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※本記事は JIS Z 2911:2018 に基づく拡張試験の結果・経過を示すものであり、試験条件下での結果です。実際の施工環境における効果や持続期間を保証するものではありません。本記事の試験・基準は業務用を対象としています。「約9年分」等の数値は当研究所基準による換算値であり、効果の保証ではありません。掲載データの無断転載・改変を禁じます。

